父の命日
そういえば
今日は父の命日だなぁと
子どもに朝ごはんを
食べさせながらふと気づいた
もう何年前になるんだろう
父と一緒に生きた時間よりも
亡くなったあとの時間の方が長くなり
だんだんと思い出すことも
なくなってきて
生きていた父と私の間に
どんな空気を纏っていたのかは
朧げすぎて掴めなくなっていく
思い出せるのはあの日をどう過ごしたかの私のこと
子どもを幼稚園に送ったあと
生きていた父そのものを思い出してみようと
思って目を閉じた
私の目の前に父を立たせて
身長
肩幅や
体の厚み
関節の大きさ
掌
指の形
ひとつひとつを思い出そうとしても
わからないことだらけで
形を失ったものに
形を与えるだけの記憶がないことが少し悲しい
その中ではっきり思い出せたのは
色黒の肌と鼻の形
その二つは私の体に父の形見のように引き継がれて
毎日 目にするものだから
あっという間に
子どもの迎えの時間がきた
小さな手を握って
水溜りをジャンプしたり
カタツムリを見つめたり
雨上がりの道を歩く
あの日から時間は
ちゃんと前に進んでる
私は母になったし
父はおじいちゃんになった
そうやって命はしっかり引き継がれていく
激しい雨のあとの空から
綺麗な光が私たちを照らしてる
LIFE IS BEAUTIFUL
世界は光に満ちている